なぜ今、「翔べイカロスの翼」なのか


 写真学校を卒業した青年が、撮影旅行の中でサーカスと出会い、サーカスに魅入られ、ピエロとなって活躍するというストーリーは一見奇抜ですが、これはあるサーカス団で実際に起きた悲劇をモデルとして作られたノンフィクション・ドラマです。

 約20年ほど前、テレビの普及などにより衰退の陰が見え始めたサーカスのなかへ飛び込み、当時、日本では脇役にすぎなかったピエロを、サーカスの主役として定着させた一人の青年がいました。キグレサーカスのクリちゃんこと、栗田徹さん(26歳)。

 自らの夢を追い続けた彼は、興業中に不幸にも転落死をしてしまいましが、彼の死に対して、当時多くの国民が悲しみを持って受け止め、その死を惜しみました。

 この映画は1980年に一般公開された作品です。当時も現在と同様、受験戦争・校内暴力などで、学校の荒廃が叫ばれ、一部の若者たちは夢を失っていました。

そんな中で公開されたこの映画は、青春の孤独のなかで、彼が求め続けたのは何かを問いかけ、「夢」という言葉を、私たちに考える機会を与えてくれました。

 映画の主演は歌手のさだまさし。1979年の「関白宣言」の大ヒットで一躍脚光を浴び、その勢いと天性の演技力が注目されての起用でした。現在は結婚式場などでも使われる名曲「道化師のソネット」はこの映画の主題歌として書き下ろされたものです。

 残念なことに、独立プロダクション製作の映画と言うことで、映画自体忘れ去られ、現存するフィルムも廃棄される日をただ待つのみとか。

「ピエロ、ピエロ・・・子供たちには知らせるな」

 ラストシーンで主人公がつぶやくこの台詞に込められた想いを、今の時代に伝えたい。すべてが失われる前に・・・それが、この企画です。


翔べ イカロスの翼 実行委員会 mailto: tobeika@fan.club.ne.jp